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三十路ゲーマーのチラシの裏

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逆転裁判 (4エントリー中、2エントリー目)

※ネタバレ注意!!

前回のエントリー:逆転裁判 (4エントリー中、1エントリー目)

あなたが逆転裁判のシナリオライターだったとします。ゲームシステムがすでに出来上がっていたとして、どのようなシナリオを考えるでしょうか。アイデアなんていくらでもあるように思えますが、いいシナリオを書こうとするとこれがなかなか難しい。ゲームシステムの特殊さが、シナリオライティングにいくつもの制約を与えているためです。今回のエントリーでは、シナリオライティングの制約を確認しながらプロットの再構築を行います。


1.法廷パートのボリュームをどう出すか

逆転裁判のシナリオライティングにおける1つ目の制約は、法廷パートのボリュームの出し方が決まっていることです。まずは、法廷パートの流れを表した下図を見てください。



法廷パートのボリュームを出すということは、証言フェーズの回数を増やすということです。しかし、単純に証言フェーズの回数を増やせば解決するという問題ではありません。法廷パートは、真犯人が矛盾を抱えきれなくなった時点で終了してしまいます。つまり事件に用意できる矛盾点の数が、証言フェーズの回数の上限となるのです。水増し以外の方法で矛盾点を増やすためには、事件を複雑にするか規模を大きくするかしかありません。ただし、それでは達成感が得られるまでのスパンが長くなってしまいます。十分なボリュームを取って適切なスパンを捨てるか。それとも、適切なスパンを取って十分なボリュームを捨てるか。どちらも捨てられないのだから、どちらも捨てないで済む方法を考えましょう。解決策は1つ。適切なスパンで解決できる事件をプレイヤーが満足できる数だけ用意することです。ここは1本の長編で最後まで持たせる選択肢を捨てて、ショートシナリオを複数用意する方向で考えます。

2.複数のシナリオをどうまとめるか

法廷パートのボリュームの出し方については解決しましたが、シナリオを複数用意することにより新たな問題点が発生します。それは、複数のシナリオを1つの作品としてどうまとめ上げるかということです。関連性を考えずにシナリオをただ並べるだけでもゲームの体裁は繕えますが、それでは到底いい作品になりません。やはり何らかの工夫が必要になります。もっとも、これには悩むまでもなく明確な解答が存在します。それは、”真実を明らかにすること“を肯定するテーマにすることです。逆転裁判のゲームシステムでは、矛盾を指摘し続けて真実を明らかにする以外の法廷戦術が認められていません。したがって、真実を明らかにすることを肯定することでしか、ゲームシステムにテーマを関連付けられないのです。弁護士が“真実を明らかにする”という法廷戦術をとるにあたっては“被告人を信じること“が前提条件となるため、逆転裁判のテーマは” 被告人を信じて真実を明らかにすることの肯定“となります。ベストのテーマが存在すること。これが逆転裁判のシナリオライティングにおける2つ目の制約です。

3.何をシナリオの主軸に据えるか

次に何をシナリオの主軸に据えるかですが、一般的には”主人公の成長”が多く見られます。これは主人公の現在と過去を対比することにより、成長した部分だけをテーマとして容易に抽出できるためです。しかしながら、この方法は逆転裁判においてベストとは言えません。何故ならば、ゲームシステムが最初から最後まで変わらないからです。主人公の成長していない状態とは真実を明らかにすることの重要性に気付いていない状態のことなので、矛盾を指摘し続けて真実を明らかにするという法廷戦術を主人公が最初からとっていることに無理が生じます。ゲームシステムが主人公の成長を表現できないこと。これが逆転裁判のシナリオライティングにおける3つ目の制約です。もちろん、主人公の成長をシナリオの主軸に据えられないだけで、他の方法は残されています。主人公を成長の余地のない完璧なキャラクターにして、成長の余地のある完璧でない別のキャラクターと対比するのです。その役割にはライバル検事以上の適任はいないことから、”ライバル検事との因縁”をシナリオの主軸に据えることにします。

4.理想の法廷のあり方

さて、ここでひとまず逆転裁判における理想の法廷のあり方について確認しておきたいと思います。



(1) 弁護士と被告人は信頼関係にあり、弁護士は被告人の立場から無罪を主張する。
(2) 検事と警察は信頼関係にあり、検事は警察の立場から有罪を主張する。
(3) 証人は客観的な立場から事件に関係する情報を提供する。
(4) 弁護士と検事はそれぞれの立場から事件を検証し、真実を明らかにする。
(5) 最終的に裁判長が公正な判決を下す。

弁護士は決して特別ではなく、あくまで検事と対になる存在です。最高の弁護士に信じるものがあるように最高の検事にもまた信じるものがあり、最高の弁護士が真実を明らかにするために法廷に立つように最高の検事もまた真実を明らかにするために法廷に立つのです。

また、逆転裁判におけるメインはあくまで法廷パートなので、法廷パートに出番がなくては重要キャラクターになれません。法廷パートの出番とは、裁判長・弁護士・検事・被告人・警察・証人・真犯人の7つ。それぞれの役割は、あらかじめ決まっています。裁判長はドラマに絡まず公正な判決を下す立場に。弁護士は主人公および主人公の味方に。検事は弁護士と意見を対立させるという意味で敵に。真実を明らかにするという目的を同じくするならば同志に。被告人は主人公と信頼関係で結ばれた仲間に。依頼人として守るべき対象に。警察は事件の説明役に。最高の検事に対しては信頼関係で結ばれた仲間に。証人は情報提供者に。真犯人は私利私欲のために真実を隠匿するという意味で真の敵に。これら立場ごとの役割が決まっていることが、逆転裁判のシナリオライティングにおける最後の制約となります。

5.プロットをどう組み立てるか

それでは、プロットについて考えていきましょう。ここまでベストの選択をしてきましたが、それでもシナリオ軸とテーマのそれぞれに問題点を抱えています。シナリオ軸の問題点とは、敗北の約束されたライバル検事はシナリオが進行するほど強敵としての価値を失っていってしまうこと。テーマの問題点とは、”真実を明らかにすること”にはそもそも段階がないため、最終話以前にテーマを明らかにしてしまうとシナリオが後に続かなくなってしまうこと。これら2つの問題点をどう解決するかが、プロットを考える上での大きな課題となります。

まずはシナリオ軸の問題点についてですが、対戦する検事をライバル検事だけに限らなければ解決できます。ライバル検事との対戦回数を、主人公との関係性を印象付けられて、なおかつ敗北回数を強敵としての価値を損なわない限界ギリギリに留めておき、最終話でライバル検事より強い”最強の検事“を登場させるのです。無論、”ライバル検事との因縁”をシナリオ軸に物語を進行させることから、ライバル検事には最終話において検事ではない別の立場で重要な役割を担うことが求められます。最終話における空きポストは、被告人と真犯人と証人の3つ。真犯人は負け続けのライバル検事では役者不足ですし、証人は弁護士との関係性が低いという意味で問題になりません。したがって、強敵としての価値を問われず弁護士との関係性の高い被告人こそが、最終話におけるライバル検事の立場ということになります。ただし、登場する検事が2人だけでは、ライバル検事は2人いる検事の弱い方という良くない印象を与えかねません。そこで、ライバル検事の登場前に”普通の検事“を登場させることにより、ライバル検事の有能さを引き立てます。

次にテーマの問題点についてですが、プレイヤーがテーマに気付く可能性のあるポイントをあらかじめ潰しておかなければなりません。そうしたポイントは、大きく2つあります。1つ目は、主人公とライバル検事の対立軸です。ライバル検事は主人公との対比によってテーマを浮き彫りにするキャラクターなので、2人の対立軸に気付かれることがそのままテーマに気付かれることに繋がります。そこで、ダミーの対立軸を設けることによって、プレイヤーをダミーのテーマへと誘導するのです。これにより、プレイヤーの目を正しいテーマから逸らさせることになります。2つ目は、シナリオ開始直後です。”真実を明らかにすること“というテーマはゲームのクリア条件と同一なので、普通にプレイされるだけでテーマに気付かれる恐れがあります。そこで、オープニングであらかじめ真犯人を明らかにしておくのです。これにより、プレイヤーの目的意識は”真実を明らかにすること“ではなく”冤罪を着せられた被告人の無罪を勝ち取ること“へ向けられることになります。なお、ダミーの目的意識を植え付ける必要があるのは、プレイヤーをダミーのテーマへ誘導するまでです。つまり、ライバル検事が登場してダミーの対立軸が提示される第2話までということになります。

ここまでの状況を、2つの表にまとめてみました。



まとめてはみたものの、空欄が目立ちます。これらの表を完成させてみましょう。

上の表は、シナリオ全体の流れを示しています。シナリオ軸が”ライバル検事との因縁“なので、ライバル検事の登場しない第1話ではほとんどテーマに触れません。第3話では、最終話に向けてライバル検事が信用に足る相手だと理解させるための布石を打っておきます。下の表では、シナリオ上の扱いに制約のある3要素を抽出しました。実は、これら3要素はテーマに深く繋がっています。オープニングは”真実を明らかにしようとする目的意識“に、検事は”無罪判決を勝ち取るまでの困難さ“に、被告人は”シナリオが始まった時点での被告人への信頼度“に。これに気付いたならば、空欄を埋めるのは難しくありません。シナリオの進行に合わせて、プレイヤーに要求するハードルを高くしていけばいいのです。



ようやくプロットが形になってきました。さらに煮詰めていくことも出来るのですが、ここまででも十分理解してもらえるはずです。ゲームシステムの抱えるシナリオライティングの制約をことごとく克服した結果、逆転裁判と同じプロットへたどり着くことに。



今回のエントリーは逆転裁判におけるプロット構築の意図を理解してもらうためのものですが、シナリオ上に散りばめられた様々な工夫を理解する上での基礎知識を身につけてもらうためのものでもあります。逆転裁判のシナリオがどれだけ緻密なものであるか。次回エントリーで見ていくことにしましょう。

次回のエントリー:逆転裁判(4エントリー中、3エントリー目)

公式:逆転裁判
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テーマ:逆転裁判 - ジャンル:ゲーム

  1. 2007/06/15(金) 23:15:16|
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